【映画レビュー】『非常宣言』｜息もできない極限のパニックスリラー

娘とハワイへ向かうため、飛行機に乗り込んだジェイヒョク（イ・ビョンホン）。彼は、過去の出来事から飛行機恐怖症を抱えていた。
離陸後まもなく、乗客が次々と謎の死を遂げる前代未聞のバイオテロが発生。機内は瞬く間にパニックに陥り、地上との交信も困難になる。
一方、地上では妻の飛行機に異変が起きたことを知ったベテラン刑事ク・イノ（ソン・ガンホ）が、独自に捜査を開始。しかし、ウイルスの正体も、着陸できる場所さえも見つからない。
上空1万メートル、逃げ場のない密室で、乗客乗員、そして愛する家族の運命はいかに――。

この映画は、私たちをじっくり待たせてはくれません。離陸してすぐに「え、もうこんなことが起きるの！？」と声が出てしまうほどの事件が発生し、一瞬で物語に引きずり込まれます。
機内のclaustrophobic（閉所的）な圧迫感と、地上でタイムリミットに追われる捜査のスリルが巧みに交差し、141分という上映時間を全く感じさせない没入感は圧巻の一言です！

ソン・ガンホさん、イ・ビョンホンさんという韓国映画界を代表する二大スターの共演だけでも観る価値アリですが、本作は彼らの「目」の演技にぜひ注目してください。
地上で必死に活路を探す刑事の焦燥、上空で恐怖と戦いながら娘を守ろうとする父親の覚悟。セリフがなくとも、その眼差し一つでキャラクターの感情のすべてを物語る演技力には、ただただ圧倒されます。

本作の真髄は、単なるパニック映画で終わらない点にあります。
「自分や家族の命が危険に晒されたとき、人はどこまで他者を思いやれるのか？」
「多数の安全のために、少数を犠牲にすることは許されるのか？」
機内の人々、そして地上の人々が下すそれぞれの決断に、深く考えさせられます。特に、地上と上空で意見が対立するシーンは、本当に胸が苦しくなりました。観終わった後、きっと誰かとこの映画について語り合いたくなるはずです。